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水によって与えるお茶の味や色の影響についてPart5.和束の井戸水

こんにちは!

今週で最後のティーポテトです!

(注釈)このブログはインターン生パトリック(#136)による記事を翻訳しています。英語の原文はこちら!パトリック独自の味の表現がたくさん出てきますので、ぜひパトリックの世界観を楽しんでください!

今回の水の実験で日本全国&世界各地の水でおぶぶのお茶、全4種類を試しました。

少なくとも8つの水と同じくらい重要な事実を示してるのは、淹れる水によってお茶は風味が大きく変わることがあることです。そうだとすれば、、まだ使っていない重要な水がひとつありますよね〜😏

その水とは

(Figure 1. The well that is used to test Obubu’s teas.)

それは、オフィスのすぐ隣にある和束の井戸水です。

最終回の今日は和束の井戸水でお茶を淹れている様子をご紹介します。残念ながらこの水は水質検査報告がないのでカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムがどれくらい含まれているかを見ることができないのです😢

大地の煎茶

(Figure 2. Sencha of the Earth brewed with Wazuka Prime Water)

さっそく淹れてみたら、、なぜか1回目でいつもと違う味がしたので何が起こったのかしばらくお茶を眺めて考えていたら、茶葉の量を通常の半分にしたことに気づきました😓よかった〜

さて本題へ

和束の井戸水で淹れてみた大地の煎茶は、うま味は強いけど薄い。うま味は目立ちますが柔らかく、そのうま味を心地よい苦味が持ち上げつつも崩さないように重くなりすぎないように。さらに葉物系の野菜のような風味と素晴らしい花のアロマに包まれている感じです🌸。また驚くことにリコリスのようなスパイスの効いたガムドロップのような非常に軽い香りがあり、良い意味での「甘ったるさ」を感じる味。その後葉っぱを少なめにして醸造したところ、リコリス・スパイス・ガムドロップの3つの香りの存在感が強くなって何かいつもと違う感じがしました。

今回1種類の水しか試していないので、比較するものがないのが残念です…。

この数週間でテストしたすべての水の大地の煎茶のカラーチャートを以下に掲載します。

(Figure 3. Sencha of the Earth brewed with nine different waters)

全てのお茶と水の組み合わせを表にして表示すると、色の違いがより明確に現れていることがわかりますね〜。

そして、、撮影する際にカメラや光の加減を統一できなかったことが反省点でもあります😢撮影時にカメラや光の問題がありましたが、実際に私の眼で見た際には水に含まれるカルシウムの影響を見ることができ、カルシウムが多い水は全て黄色がかった色合いになった結果になりました(例:エビアン、ソラン・デ・カブラス)。

琥珀のほうじ茶

(Figure 4. Amber Hojicha brewed with Wazuka Prime Water)
(Figure 5. Amber Hojicha brewed with nine different waters)

こういった実験をしていると、いろんな方面から物事を考えてしまうことも時にはあります。

和束の井戸水で淹れた琥珀のほうじ茶は、甘いローストした香りとシナモンなどのスパイスを思わせる風味がありました。それだけではなく焙煎香はアンティークな木製家具の風味とフルーティーさも。ほうじ茶にフルーティーな味はあまりないものでこれは面白い結果です。個人的に味の表現をすると、スパイスの香りに果実味が混ざり合いスパイスに漬け込んだレーズンのような味わいです。

ほうじ茶はカルシウムの多い水で入れると、より濃くより黄色くなる傾向にあると以前の実験で発見しました。しかし色の違いにカルシウムだけが影響しているとは言い切れません。くじゅうやサントリーの水がアクアパンナやソランデカブラス(カルシウムの多い水)より濃い色とはいえ、大地の煎茶でも述べたようにカルシウムの多い水はより黄色くなるというのが私の主張です。

今回の実験の結果の場合、カルシウムの量の違いで淹れたお茶がより濃い色になったという決定的な根拠にはなりません(※これらの写真は同じ条件で撮影されたものです)。

ほうじ茶を使った研究は少なく、私が導き出した答えの他に別のメカニズムが働いている可能性もあると考えます。

松葉和紅茶

(Figure 6 Pine Needle Wakoucha Brewed with Wazuka Prime Water)
(Figure 7. Pine Needle Wakoucha brewed with nine waters.)

私は松葉和紅茶を使った実験から「お茶は水によって風味が変わるのではないか」と仮説を立てました。

和束の井戸水の場合2種類の風味を感じることができました。1つ目はピーカンの殻のような軽い香りと苦味のないさわやかな香り、そして2つ目にカボチャのような香りの2種類です。この場合、カボチャはドングリカボチャではなくズッキーニのような瓜系統の風合いです。そして後味には唾液が出るような、とても良い渋みもありました。

和紅茶でも水の違いによる色の差はありましたが、煎茶ほど顕著な差とは言えませんでした。特にカメラの光の状態が最も安定していたお茶を見ると、サントリーの水で淹れた和紅茶が安定していたと言えます。以前にも書きましたがサントリーの水はお茶の祭典でも使用されていたこともあり私が一番気になっていた水です。よく使われているということは、何か特別な意味があるのかもしれません😏

ごこう抹茶

(Figure 8. Gokou Matcha brewed with Wazuka Prime Water)
(Figure 9. Gokou Matcha brewed with nine waters)

私がこのお茶を選んだのは、以前飲んだごこう抹茶がとても美味しかったからです。この実験を始めるまでごこう抹茶を飲んだことはありませんでしたし、和束の井戸水でごこう抹茶を淹れたこともありませんでした。なので今回した実験で初めて和束の井戸水でごこう抹茶を淹れる事になりました。

さっそく和束の水で淹れてみると、、桃の風味を発見🍑?!

桃の味と言われても否定できないような強い果実味がありました。味は苦味や渋みがなく、とてもなめらかで甘い青菜のような風味もありました。この実験で試した水の中で1番強いフルーツの香りを引き出した水は、和束の井戸水だけなのでこれは魔法の水だと思います😏😁

当初は、抹茶は水で色合いがあまり変わらないお茶だと思っていました。写真の撮り方には失敗してしまったかもしれませんが、ごこう抹茶の色はくじゅうを除けばどれもよく似ています。実際クリスタルガイザー、和束水、サントリー、ソラン・デ・カブラのRGB値は、どれも2ケタしか違わなかったです。

なぜだろう?

ずっと探していた言葉がようやくわかりました。

それは、色素です

一般的に抹茶はたくさんのお湯で淹れるのではなく、水と抹茶を混ぜてペースト状にしてからお湯を注ぎます。

そこで水分が色素に与える影響を科学的に解明するため文献を探すことにしました。

そしてどうなったと思いますか?そういった研究に関するものはほとんど何も見つかりませんでした。(ある研究文献のコメント欄には水の重要性について語るアーティストでいっぱいでした。親愛なる芸術家たちよ、芸術を作るのをやめてより科学的に水を研究した記事を書いて欲しいです!お願いします!!)

そして、、次は?

これを読んでくれている皆さんは京都府の井戸水を簡単に手に入れることができないですよね。そしてここ何回かの記事で見てきたように、日本のペットボトルウォーターは簡単に手に入りますが流石に和束の井戸水は難しいと思います。でもティーツアーでおぶぶを訪れてくだされば、和束の水とその水で淹れたお茶を飲むことはできます!ぜひ私が感じたお茶の味わいを試していただきたいです!

それではこれで最後です。

インターンシップ中、水について調べたりこの記事を書いたりするのはとても楽しかったです!

番外編「水の魔術師〜和束の井戸水を作る挑戦〜」

ここからは、水の実験番外編です!

以前私は塩化カルシウムを使った実験をしました。これまで記録してきたミネラル成分はカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムの4種類です。これってもしかして……自分たちで水を作ることは可能なのではないだろうか、、??

答えは、イエス!

この実験の密かな目標は最後に和束の井戸水に近い水を作製すること、つまり世界中の誰でも材料さえあればおぶぶのお茶を和束の井戸水に近い水で淹れ飲んでもらうことができる!

実際に作製するためには、ミネラル分を添加していない蒸留水や精製水は必須です。

今回は塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムを使用しました。 これらはすべてミネラルウォーターに含まれているものなので、水が本来持っていないものを加えることはしません。

さて材料が揃ったところで水を作ってみましょう。

でもどこから手をつければいいのでしょう?ただミネラルを水に混ぜておけばいいというわけではなく、何かしら良い方法があるはずです。

まず和束町の水質調査報告書を見てみます。

これには、和束町の水に含まれるさまざまな化学物質やミネラルの濃度が記載されています。しかし井戸水がこれと同じとは限りません。ここでは水道水について書かれたレポートであることを前提に話を進めますが、まずはこのレポートから見ていきましょう。

Figure 10
. Excerpt from the 2018 Wazuka Water Report showing the mineral content of sodium, magnesium, and calcium.)

2018年のレポートによると、和束の水はカルシウムとマグネシウム(とetc…)が10.2mg/L、ナトリウム(とその化合物)が4.8mg/Lで、カリウムは記載なしです。カルシウムとマグネシウムが同じ数値になるのは再現に問題がありますが、やはりこれが水道水だと仮定しているので少なくともスタート地点には立てるでしょう。

最初の試練

この最初の試みは、単にカルシウムとマグネシウムの値を取りカルシウムだけを使用して何が起こるかを見るつもりです。ナトリウムはカリウムを含まない値を使用しそこからさらに続けていきます。

まず、和束の井戸水で淹れたお茶は製造水より少し黄色に近い色をしています。これまでの実験からどういうことなのか考えたところ、少し精製水にはカルシウムが必要だと思いました。おそらくマグネシウムを追加しても同様に黄色が増えると仮定します。

今回のほとんどの実験がカルシウム重視で行われているので、もしかしてマグネシウムで簡単な予備実験を一度したほうがいいのでしょうか😥?

1回目の水

実際に私が精製した水で淹れたお茶は、軽いうま味があましたがすぐに消えてしまいました。一方、和束の井戸水はうま味がずっと口の中いっぱい広がり長続きします。

1回目の水はちょっとやりすぎたかな(過去のブログとは違うお茶を使っての初回実験です。)あと数日でインターンシップが終わってしまうので、試したいお茶がたくさんあります。

この水には少しキレがあります。ナトリウムの方にバランスが偏っている可能性があるかもしれません。その場合マグネシウムとカリウムを加えなければいけません。そんな単純なことか。少なくともその部分は決定して、どれだけの量を入れるかが次の課題です。

そこでうま味が足りないなら、カルシウムと同量のマグネシウムを入れるようにすればいいんじゃないかと思ったのです!そうすればカルシウムに頼りすぎることなく、硬度を上げることができます。また黄色味が増すかかどうかも確認することができます。

表10で、カリウムの情報があまりないのでこの試みは推測しかできませんでした。もしかしたらマグネシウムだけ入れて、ナトリウムはそのままカリウムは入れない方がいいかもしれません。(以前使用したエビアンはカリウムの表記は記載されていませんでした。)

気を取り直して、、

2回目の水

2回目の挑戦でかなり近い色になりました。マグネシウムを加えたことでお茶に少しコシが出ました。うま味は少し増し、1回目の水に比べシャープさは少しなめらかになりました。和束の井戸水はうま味が前面に出て余韻も長く、全体的に土っぽい味わいです。後味は両者ともかなり近い感じ。実際とても近い。しかし口当たりはまだまだです。

ここでまたひとつ疑問が。

マグネシウムは後味の最後でうま味に影響を与え、カルシウムは最初の口当たりでうま味に影響を与えるのでしょうか?

そして1番重要なのは、その考えを検証する時間が私にあるかどうか、、ということです😨🙀

2回目の水の製造でもう少しのところまで来たと思いましたが、そうであった部分とそうでなかった部分もたくさんあります。

しかし和束の井戸水と比較すると、どうしても物足りなさが残る。何か物足りないのだ!!

というのも、お茶の風味に影響を与えるミネラルの研究はカルシウムや硬度に関するものがほとんどだったからです。そこでTDSを調べてみようと思いました!(本当はすべての実験でやっておくべきことだったのですが……)和束の井戸水はTDSが103なのですが、1回目の水は30台を記録していました。これは水への添加量が足りないというサインです。

なのでナトリウムの量を増やして見ようと思いました。

以前ナトリウムの配合バランスが悪く、風味に鋭さがあると思ったのを覚えていますか?そう、それは間違っていたのです!製造した水に含まれるナトリウムを増やし始めたら、風味がより大きく生き生きとしたものになり始めたのです。そして試作6回目では、製造水のミネラルはカルシウムではなくナトリウムが突出していたのです。

この試行錯誤はさらに10回ほど行いました。

そしてついに、Tea CuriousのRieさんの協力のもと答えが出ました!

これで和束の水は完成?

残念ながらノーです😢

カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムを中心に考えていますが、水には他にもたくさんのミネラルが含まれています。これらの成分は大多数含まれていますが、その他にも数十種類の細かい成分が加わっています。

でもかなり近いと思います!

これが私が精製した中で、1番和束の井戸水に近い成分配合です。

和束の井戸水のレシピ

・塩化カルシウム – 0.0225 g/L
・硫酸マグネシウム – 0.0125 g/L
・炭酸水素ナトリウム・・・0.027g/L

この数値があれば、あなたも簡単に……いや、すみません。本当に簡単に作れるわけではありません。自分で水を作るにはそれなりのテクニックが必要だと思います。

まず全ての材料を準備する場合、必ず食品用のものを購入してください。食品用でないものもたくさんありますが、そこは徹底した方がいいです。個人的には、自宅で水を作る場合の主な方法として3.78Lの蒸留水に入る量を量るようにしています。しかし、その場合でも少なくとも0.000…mlまでいける計量カップやハカリを用意する必要があります。

他には、それぞれのミネラルを濃縮した液体を作るという方法もあります。

今回の実験では、50mlの小瓶にそれぞれのミネラルの濃度を変えて作りました。もしそのような方法であれば、数値を50倍して50mlの蒸留水に加えてください。1mlのスポイトに蒸留水1リットルを入れれば、恐らく同じ結果に達することができると思います。

最後に

京都おぶぶ茶苑での滞在は終了し(2022.12)この水の実験も終了です。

最後に一言いいですか?

あなたが普段使用している水道水でお茶を淹れることが決して悪いわけではありません。

ペットボトルの水で実験するのは楽しいですが、本当にお茶を抽出するために使用するのはあまりお勧めはしません。 もちろん試したいくつかの水でもおいしいお茶を作ることはできます。

しかし私が伝えたいのは、それ以上に淹れる水に関係なくお茶を楽しんでもらうことが1番大事だと考えます!

お茶を楽しみつつ、今回の実験のように水で色々な変化も一緒に楽しんで欲しいです!

See you..again

水の実験Part1:エビアン&キリンミネラルウォーター(静岡県産)

水の実験Part2:クリスタルガイザー&温泉水98(鹿児島県産)

水の実験Part3:アクアパンナ(イタリア産)&ナチュラルミネラルウォーター(大分県産)

水の実験Part4:ソラン・デ・カブラスとサントリー&サントリー天然水(鳥取産)

水の実験Part5:和束の井戸水

あとがき

最後までご覧いただきありがとうございます!

パトリックの水の実験は非常に興味深く、私たち茶農家でも気づかなかった視点や表現力を用いて新たな発見をさせてくれます!同じお茶でも水の違いでここまで色や味に変化が現れるということが皆さんも少し感じていただけたでしょうか?

皆さんも様々な方法でお茶を楽しんでみてくださいね!

まさかパトリックが和束の井戸水を精製する挑戦をしていたなんて!!驚きと尊敬の思いでいっぱいです!

今回パトリックが実験で使用したお茶は全ておぶぶのショップリストから購入することができますのでご覧ください!パトリックのようにその地域にしかない天然水でお茶を淹れ、味の飲み比べをしてみても面白いかもしれません☺️

その際は、私たちおぶぶスタッフに感想を教えてくれると嬉しいです!