ハワイの茶畑と茶農家の方々
ご存知でしたか?
ハワイに茶畑があることを!
僕たち自身、ハワイでお茶を栽培しているなんて想像もしていませんでした。
今回の海外ツアーの事前調査で、ハワイでの茶作りをはじめて知りました。
そして、生産者の方と連絡を取り合い、12/22,23の二日間、ハワイでのお茶作りを実際に視察してきました。その様子をご紹介させていただきますね。
ハワイ王朝最期のリリウオカラニ女王
◎ハワイにおけるお茶の歴史
ハワイでの茶作りの歴史は、ハワイ王朝末期の1887年に始まります。
1892年には、5エーカー(約6000坪)の茶畑が開かれますが、経済的な理由により、この試みは失敗に終わります。
その後の100年、ハワイでの茶作りは、一部の研究者をのぞき、ほとんど注目されていませんでした。
サトウキビプランテーションの農夫たち
そして1985年代、
ハワイで隆盛を誇った、製糖産業が斜陽となり、製糖メジャーは、次世代の商品作物として「茶栽培」に注目。ハワイ4島(カウアイ、マウイ、オアフ、ハワイ)で茶栽培に試みます。
その中の一社アレクサンダー&ボールドウィン社は、リプトンとパートナーシップを組み、茶栽培に挑戦しますが、結局どの挑戦もコスト面で折り合いがつかず、失敗に終わります。
ハワイ島メアラニにある研究農場での茶摘みの様子
1990年代、20%を割り込んだハワイの自給率、衰退するハワイの農業を憂慮したUSDA(アメリカ農務省)やハワイ大学の研究者らによって、茶栽培が再び注目を浴びます。
そして2000年に入り、
アメリカ農務省のZee博士らの研究により、ハワイ島での茶栽培が可能であることを証明しました。
ハワイで茶作りに挑戦する日本人イノタカヒロさん
そして現在、12名ほどの茶農家が誕生し、茶栽培を続けています。
そのすべて茶農家は、1990年代に入ってから茶栽培を始めた人ばかりで、まさにハワイでの茶作りは、始まったばかり。
現在ハワイ島の茶農家は、大規模農業で大量生産を目指すのではなく、小規模で農薬や化学肥料に頼らない持続可能な農業を行い、農業の新しい形を模索しています。
ハワイ島ボルケーノの茶畑にて
今回訪問したハワイ島の茶農家
今回ハワイ島では、茶を栽培する4つの農園を訪問しました。
今回訪問した茶農家は、すべて2000年代に入ってから茶栽培を始めた方ばかり。そのバックグラウンドもさまざま。これまで農業を生業としていた人は一人もいません。
ハワイでの茶作りの先駆者エヴァ・リーさん
エヴァ・リー[Eva Lee]さん
エヴァさんの茶畑は、ハワイ島の南側のボルケーノにあります。ここはマウナロア山のふもとにあり標高が1000mを超える場所です。
雨の多いこの地域に熱帯雨林の林の中と、よく日のあたる場所に茶の木を育てていました。
エヴァさんが育てる茶の苗木
また、エヴァさんは、ハワイのお茶作りを先導してきたNPO法人ハワイ茶協会の元会長で、茶の苗木栽培にも熱心に取り組んでいます。ハワイの他の島からも苗の需要が増えており、年間1万本以上の苗を出荷しているとのことです。
自慢の鶏をかかえるベンさん
ベン・ディスコウ[Ben Discoe]さん
元コンピューター・プログラマーのベンさんは、自給自足的な農業を目指し、ハワイ島ホノカアに移り住みました。現在、野菜栽培や養鶏、そして茶栽培をされています。
イノシシよけの柵で囲った茶畑
ベンさんの茶畑は、ホノカアからマウナケア山を10分ほど登った標高1000mくらいの場所にあります。
ベンさんの茶畑の特徴は、無農薬有機栽培で育て、茶畑にはマカデミアンナッツの殻で作った炭がふんだんに撒いてありました。
茶園の広さは200坪ほどで、植えてまだ4~5年しか経っていないとのこと。
イライアさんとご主人のキャムさん
イライア・ハルペニー[Eliah Halpenny]さん
カナダから移住してきたイライアさんの茶畑は、ハワイ島南部にあるグレンウッドという場所にあります。
茶畑は、敷地内に3箇所くらいに点在しており、広さはあわせて300坪くらい。
広々とした敷地にひろがる茶畑
紅茶品種である葉の大きなアッサム種の茶木が多く植えられていました。イライアさんの茶作りは、非常に家庭的な雰囲気で、アーティスティックな農業を目指しているという感じでした。
自然農法で育てた茶葉を試飲させてくれるイノさん
イノ・タカヒロ[Takahiro Ino]さん
石川県出身のイノさんは、カリフォルニアの大学で農業を学び、大規模ではなく持続可能な農業を志し、茶作りをするためにハワイ島ホノカアにある標高1000mの場所に移住してきました。
イノさんの自然農法で育てている茶畑
現在、茶畑の広さは約1000坪くらい。農薬はもちろん肥料もやらず、耕すこともしない「自然農法」を実践しており、イノさんの茶畑はすべて「自然農法」で栽培されています。
また日本茶インストラクターの資格を持つイノさんは、伝統的な釜炒り製茶法で、緑茶・ウーロン茶・紅茶を生産されています。
ハワイさんの茶葉をティスティング
ハワイ育ちのお茶
現在ハワイでは、緑茶、ウーロン茶、紅茶が作られています。
収穫は、年5~6回行われ、そのすべてを手摘みで収穫し、どのお茶も手もみ製法で製茶されています。
殺青(さっせい)は、釜炒りが一般的で、このあたりは台湾のお茶作りから導入されたものが多いようです。(日本は蒸しが一般的でおぶぶのお茶も蒸し製のお茶です。)
ハワイ育ちのお茶を少しだけテイスティングさせていただきましたが、味・香りともにやさしい感じでした。
樹齢7年の茶木。根元はこの太さ。
2日間の視察で感じたこと
ハワイでの茶作りは、実質始まってからまだ10年程度。よって茶木も若く、技術的にも育成・製茶の両分野においてまだまだ発展の余地がありそうです。
日本茶でも中国茶でもインドの紅茶でもない、ハワイ独自のお茶作りを目指しており、このあたりも模索中といったところです。
すべての茶農家が、農薬や化学肥料に頼らず、環境にやさしい持続可能な農業を目指しているところは、これからの農業を考える上で注目に値します。
アッサム種(紅茶品種)の茶葉はこんなに大きい。
現在、ハワイの農業は、人件費や地代の高騰により、パイナップルやサトウキビなどのプランテーションによる大規模農業がほぼ破綻し、停滞しています。
そのような状況にあって、ハワイでの茶作りは、新しい農業の形の模索といえるでしょう。このような取り組みが、世界的な観光地でもあるハワイでどのように進化していくか、気になるところです。
■ハワイにおけるお茶の歴史
The History of Tea in Hawai’i(pdf版)
■ハワイにおける茶産業を発展させる要因
Factors affecting development of a tea industry in Hawaii(pdf版)
■ハワイで茶ができる?とこの夏の島で、お茶の手もみ体験
(舞妓の茶本舗ホームページより)
■ハワイお茶紀行
鹿児島県立短期大学 木下朋美助教授のレポート(pdf版)
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